精子提供から考える”家族の形”とは?

精子提供に限らず養子縁組や代理母出産など、医療の発達により家族の成り立ちが多様性を増してきました。欧米では日本よりもさらに進んでいることで、多くの葛藤が生まれています。その一つが、精子提供により誕生した子供たちが、”家族”をどうとらえるか、”精子提供者”をどうとらえるかという問いです。

TEDとよばれる講演会で興味深いプレゼンテーションがあったのでご紹介します。

精子提供が生み出す家族の新しい関係性

社会学者で哲学者でもあるヴィーラ・プロブーストは、「親とは何か?」と問いかけます。

精子提供を選択した家族へのインタビュー

彼女は、精子提供を受けたあらゆる形の家族と、生まれた子供たちにインタビューしました。こういった調査が成り立つことそのものが、欧米で「産む選択肢」が認知されていることを物語っています。

聞き方は、直接できはなく木にリンゴを配置するという方法です。木は家族全体、リンゴは家族のメンバーを意味します。

子供たちは、身近な存在である育ての親や兄弟の名前をリンゴに書き配置していきました。
子供たちは、自らが両親とは異なる人物の協力を得て生まれたことを理解しています。

精子提供者の存在

そこで、生い立ちから、精子提供者の存在を訪ねます。すると、ある子どもは、良い種をたくさんもっている男性から、両親は種を譲りうけ母親の胎内で成長し誕生したと答えました。

ならば、先ほどの木に精子提供者がどのように配置されるのか?興味深く観察すると、幹に置かれたのです。

親ではないものの、大切な存在として。

精子提供で生まれた子供たちの親は、”血のつなりのない親を拒絶するのではないか”という恐怖にかられます。

インタビューの結果、多くの家族は子供たちに生い立ちを説明する上で、物語を交え話をしていました。親は自分たちの選択を正当化するため様々な方法を用いました。

しかし、共通することが一点。それは、子供たちにどうしても会いたかったということでした。

その結果、子供たちなりに、親と精子提供者の存在を受け入れているケースが多かったのです。

家族をつくる

もちろん、それですべての問題や不安が消えるわけではありません。生い立ちを共有できたうえで、少しずつ家族の形を作っていく必要があります。

ともすると、妊娠・出産することが目的化しがちです。その先にある子供たちと過ごす時間や成長を見届けることが家族になる過程だとすれば、どんな家族を目指すのか、どのような家族ならあなたとお子さんが納得できるのか、よく考える必要があると感じます。

まとめ

簡単なことではないからこそ、逃げずにお考えいただければと思います。精子提供前のカウンセリングをさせて頂いた際に、お子さんにはすべてを話したいという方や、その反対の方もいます。どのような説明をされるにせよ、大事なことはお子さんが自分は親に大切にされている、強く求められて今存在しているという実感がわくことです。